新大阪からJR紀勢線の特急で3時間。温泉で有名な白浜の20分先が周参見(すさみ)だ。ここまで来ると海の色は独特の青さを増し、「南紀にやって来た」という実感がある。夏の観光シーズンを前にした静かな町に、梅雨空を押し分けるように黄色いアドバルーンが2つ上がった。和歌山県を本拠とするオークワのすさみ店が新たにオープンした合図だ。
防潮堤に守られた旧店から周参見川沿いに狭い街並みを徒歩10分ほど北に抜けると、新店があった。2階建てだった旧店より若干狭く、売場面積990mの平屋建て。駐車場は62台ある。オークワ和歌山ゾーンのマネージャー松田康氏は「小商圏で競合店がないだけ、旧店の閉鎖から開店まで、3日間の休業が限度だった」と綱渡りの工期を振り返る。
スーパーは“地域の冷蔵庫代わり”――食品に特化したため、旧店ではある程度揃っていた衣料品や雑貨類が減少した。対岸にある老人福祉施設では「利用者の人が重宝していた身の回り品が減ったので、どこで買えばいいのやら」と食品の充実を喜びながらも、困惑顔だった。
いつ起こるか分からない大地震。複雑に入り込む海岸線は、津波が来たらお手上げだ。高台に上がるのが最も確実だが、土地の確保が難しい。新店の移転開店で「津波注意」の標識が立つ海岸べりからは、ある程度の距離を稼ぎ、耐震性も確保した。投資額は3.4億円。勢いのある企業だからこそできたことだが、その姿勢は大いに見習いたい。
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