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No.592-4/12

圧倒的な品揃えとサービスで
不況化でも急成長を続ける「北野エース」

No.592号

  この写真はある書店を撮影した一枚…ではなく、実はこれ、あるスーパーの売場を写した一枚なのである。そのスーパーとは現在のデフレによる低価格志向とはまったく逆の、高価格・高品質の商品を大量に揃える店作りを進め、出店攻勢を強めている『北野エース』だ。この書店の本棚のようにも見える写真は4月2日に東京・調布にオープンした「北野エース調布パルコ店」のレトルトカレー売場。総勢400種近くのレトルトカレーを取り揃え、入口正面で来店客を迎えるその佇まいには威圧感さえ漂っている。

店長主導で消費者に飽きさせない商品を展開


  「北野エース」を語る上で、その品揃えの豊富さははずせない。100種類近くある醤油に、味噌。デザート類や日配も普通のスーパーではお目にかかれないような珍しい物ばかり。日本酒やワインも充実している。そして、なにより特筆すべきはレトルトカレー。表紙でも触れたが、調布パルコ店のレトルトカレーの棚は壮観だ。一見したところでは、スーパーになぜこんな本棚があるのかと、惑ってしまうほどの圧倒的な存在感がある。


  もともとエースは兵庫県伊丹市が発祥の地で、阪急沿線の駅近くに出店する「ごく普通のスーパー」だった。関西スーパーなど早くに上場を果たした各社の後を追いかける日々が続いていたが、小型の上質な店舗を駅ビルやデパートに展開することをきっかけに、ブレークし“西の成城石井”と称されるほどにまで成長。さらにデフレ不況の波と同時にスーパー各社の大型出店が減る中で、逆に昨年からの出店は加速度を増し、2009年に8店舗、2010年には調布パルコ店を含め大阪、福岡、とすでに3店舗を出店。4月末までにさらにもう2店舗を出店する。


  消費者からのデフレを歓迎する声はまだまだ消えてはいないが、エースのように高価格の商品を扱う店舗が好調であるのも事実。もちろん高価格の商品が売れるためには、他の商品にはない魅力がなければならない。エースではバイヤーが仕入れたものが、そのまま店頭に並ぶのではなく、店長がバイヤーの仕入れてきた商品を見てどれを店頭に並べるか決めていく。調布パルコ店では8割以上の商品が店長の判断で導入されている。もちろんその分、店長にかかる負担は大きくなるが、消費者の傾向がますます多様化している現在の状況では、日々顧客を目の前で見ている人間にしかわからないことが多いのではないか。


  「ブランドがないのがブランド」とエース統括事業本部店舗開発室開発担当の栗田佳敬次長は話す。無個性ということではない。誰かに決められ、用意された個性は『北野エース』にはなく、店舗自らが、その地域、店舗にあったオリジナルの個性を作り出し、消費者を飽きさせない品揃えを実現する。今の時代、多くの物があふれ、人はそれぞれの価値観を持つようになった。そんなオリジナルの価値観に応えるには総体的な戦略では難しい時代になったのかも知れない。


  「首都圏で売上100億円」を目指す『北野エース』。デフレスパイラルに変化の一石を投じる「エース」となることができるか。今後の成長が楽しみである。


今週の目次




流通羅針盤


今週の業界トピックス

エキュート 東京駅改札内商業ゾーン「サウスコースト」にオープン
しまむら 売上高、利益で過去最高を達成した2010年2月期
平和堂 吸収合併の平和堂東海がオンされるも既存店大苦戦


MDフラッシュ


今週の開店情報一覧


SJ新店レポート

ビバホームのテナントとして売場676坪で展開
 ベルク高崎大八木店
JR駅商業ビルの地上2階に同社初出店
 成城石井アトレヴィ巣鴨店
「大極殿」を思わせるしつらえに中身もブラッシュアップ
 イオンモール大和郡山


ハマさんのコーヒーブレーク・73 コラムニスト 浜本經道

おいのち、いただきます


企業動向

国分、青島に合弁新会社を設立、2年後年商10億目標


食品マーケティング

新・本格ソースへの動き強まる 
よりプロの味へ挑戦
 *キユーピー、野菜から「料理ソース」へ
 *ハインツ日本、まず業務用で「チーズソース」
商品クローズドキャンペーン「アクリフーズ」や「カゴメ」


清水信次の「やれば、できるんだ」我が流通人生の軌跡・27

「売上税反対」は国民的な反対闘争に


食材ノートコラム・34 ニラ


今週の大店立地法公示速報


交差点

現代に何かを語りかける「羅城跡」の柱列



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