「3 Mins to eat(3分で食べられます)」と書かれた表示の奥に、ステンレス製の釜が並んでいる。これは3台で400万円もするアメリカ製の「高速圧力スチーム釜」だ。お客が注文したムール貝などの魚介類が、たったの3分で蒸し上がり、店内でワインなどとともに食べることができる。香港の地場スーパー・YATA(やた)の試みを紹介する。
イートインに隣接する香港初登場の「OYSTA+」。アメリカ産をはじめ、世界中の新鮮な生ガキが味わえるオイスターバーだ。ホットデリのメニューも20種類ある。高速・高圧のスチーム釜で「3分で本格的なムール貝のワイン蒸し」も味わえる。
もう一つの新しい試みは、自分で好きな海鮮ネタを選べる「勝手丼」コーナーだ。これは北海道釧路市の「和商市場」の名物をそっくり取り入れた。空輸される素材を提供するのは中島水産だ。
駅前の商業ビル地下1階にあるので、ランチに「勝手丼」で買い求めた海鮮丼をかき込むオフィスワーカーがいた。夜は「お気に入りのワインを買い求めて一杯」という利用法も可能になった。
食べることに関しては、どこにも負けない香港人。「スチーム釜に400万円もかけて、採算は取れるのか?」という心配はヤボというものだ。「スーパーの売場で、お金を使ってもらえるのなら、少々の投資は惜しまない」と考えたのだろう。
外食文化が定着している香港。平日でも1日5,000人の来店客がある観塘店には、週末ともなれば5万人もの人が訪れるというから、このイートインも「満席御礼」になっているのは間違いない。
「スーパーはモノを買ってすぐ帰るところ」から、買い物のついでに「飲み食いもするところ」にチェンジする時代が、すぐそこまでやってきている。
日本でもイートインを設けるスーパーは激増しているが、その応用編はこれからだ。香港のスーパーで見た「分福茶釜」は、童話の世界ではなく、現実世界の未来像かもしれない。 (P10~13に海外店レポート「YATA観塘店」を掲載)
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