産地を訪ねて
新潟県最北・最東の市である新潟県村上市。かつては村上藩の城下町として栄え、現在でも武家町、商人町の面影が残り、県下三大祭の一つにも数えられる村上祭などが行われる。
その村上市の名産品と言えば、北限の茶や村上牛などもあるが、最も有名なのが三面川の鮭である。毎年秋になると村上市内の川には鮭が上り、漁師が鮭漁を行う光景を見ることができる。中でも三面川では秋になると『ウライ』と呼ばれる柵が設けられ、産卵のために遡上してくる鮭を一括採捕する。またウライより下流では「居繰網椋」と呼ばれる伝統漁法が行われ、3艘の川舟を川の流れに乗せてひし形に広げながら使い、一艘に漁師が2人ずつ乗り、先行する1艘は網に鮭を追い、後方2艘の前方の一人は櫂で舟を操り、後方の漁師は水中におろしたサイ縄を握り、川を上って来る鮭が網にかかると舷を叩き呼吸を合わせて鮭を捕る。
その村上市で鮭を使った料理の中で最も人気があると言われているのが、『塩引鮭』である。新鮮な鮭と天然の粗塩だけを使い、塩が貴重品だった時代からふんだんに塩を身にすり込んで作られていたことから、「塩を引く=塩をすり込む」という名の由来と言われている。
造り方はまずエラを取り、頭の裏の部分に包丁を入れ、お尻の方から腹を割く。内臓を全て取り除き、皮の外側に尾から頭に向って塩をすり込み、腹の中にもすり込む。塩を利かせるためにある程度、塩を腹の中に残しておき、目などあらゆるところにすり込む。数日後に塩抜きをし、洗ったあとに乾燥をする。この約1か月にも及ぶ乾燥の工程で、村上独特の低温多湿の気候風土が、鮭のアミノ酸をじっくりと発酵させ、新巻鮭や塩鮭とは違う、他の土地では真似のできない美味しく熟成した「塩引鮭」が造り上げられる。
村上では塩引鮭は大晦日の晩の年取り魚として食卓に上がり、その家の一年の締めくくりに食べて祝う。
村上の町やあらゆるところに塩引鮭が吊るされた風景は村上の冬の風物詩となっている。
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