北野祐次氏の胸像が物語る創業の精神
10月29日に開催された「関西スーパーマーケット」の臨時株主総会の会場入り口で=兵庫県伊丹市
今年1年の世相を表す漢字は「金」に決まった。東京五輪・パラリンピックの金メダルラッシュ、大谷翔平選手のMVPや藤井聡太さんが将棋界で四冠を達成した「金字塔」に、多くの人が票を投じた。 この1年、スーパー業界はどうだったか。夏以降、大きな話題になったのは、「オーケーによる関西スーパー買収騒動」だった。これも、お金が絡む点では「金」だが、10月29日に開催された関西スーパーマーケットの臨時株主総会の会場入り口に置かれてあった創業者・北野祐次氏の胸像に心を揺さぶられた。「日本のスーパーマーケット業界の礎を築いた」金字塔を打ち立てた人の企業に降りかかった難題は、「経営統合」で一件落着した。
◇…6時間に及ぶ総会を経て、僅差で関西スーパーとH2Oリテイリングの経営統合案が可決されたが、白票を投じた株主の取り扱いを巡って舞台は急転、判断を仰いだ神戸地裁は、オーケー側の言い分を認めたが、大阪高裁は関西スーパーの異議に理解を示した。最後は最高裁が統合を認める判断をした。
◇…関西市場をうかがうオーケーはその昔、他のスーパーがそうであったように、関西スーパーに学んだことがあった。教えを乞う企業には、そのノウハウを分け隔てなく提供していた北野氏の度量の深さがあったからだ。
◇…もう2年にもなるコロナ禍では最初、スーパー業界には思わぬ神風が吹いた。巣ごもり需要という、盆と正月が一緒にやってきたような活況だったが、それも終焉。この先は、何もかもが、値上げの嵐に見舞われる。流通暗黒の時代に果敢に道を切り開き、食品スーパーの礎を築いた人に「創業時の思い」と、これからの指針を今一度、聞いてみたい気がする。
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